今日はベンゼンに続いて、シックハウス症候群の原因物質であるトルエンについて紹介します。
トルエンとは、ベンゼン環に「メチル基」が1つついた芳香族炭化水素と呼ばれる有機物です。別名、メチルベンゼン、トルオール、トロール、フェニルメタンとも呼ばれます。
無色透明で、常温で液体です。炭素(C)が7つ、水素(H)が8つで構成された分子です。
臭いが強い物質で、いわゆるシンナー臭として有名です。その臭いの強さから、悪臭防止法という法律で指定されています。ちなみにトルエンの指針値は、空気1立方メートルあたり260マイクログラム(0.07ppm)と規定されています。
トルエンの特徴は溶解力が非常に強く、様々なもの(塗料、接着剤、ゴム、インク、油など)を溶かせるため、種々の溶媒として用いられてきました。ただし、水には溶けにくい物質です。また、トルエンそのものが自然には分解しづらく、その意味では非常に安定した物質と言うことが出来ます。
例えば、塗料を希釈するためのシンナーの原料として、接着剤の粘度を落とすための希釈剤などとして使われています。
トルエンの健康に及ぼす影響はベンゼンに似ていますが、トルエンを吸うことにより、吸い始めは強い快感を感じるのですが、吸い続けるうちに副作用が出て、幻覚や幻聴などの症状に見舞われたり、全身の筋肉の劣化や生殖器、脳への障害が発生します。
現在では毒物劇物取締法という法律で厳しく規制されています。かつてのようにトルエンや、トルエンを含む薬剤を購入することは、個人も法人も、必要な手続きや申請をしなければできなくなっています。
トルエンは悪臭防止法や毒物劇物取締法だけでなく、多くのの法律でも規制されています。たとえば「有機溶剤中毒予防規則」、「女性労働基準規則」等でも規制されています。
トルエンの健康に及ぼす影響が大きいことから、工業的な用途においても最近は少しでも安全性の高いもので今までの業務を行えるように「代替化」が進んでいます。シンナーではトルエンを使用しない、NT(ノントルエン)タイプのシンナーや、NTX(ノントルエンキシレン)タイプのシンナーが普及するようになってきています。
溶媒を安全な物質に置き換える動きはトルエンに限らず、他の溶剤でもより安全性の高いものを使う「代替化」が進んできています。