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水の塩素殺菌とトリハロメタン

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安全な飲料水

 水の殺菌ということが言われていますが、その方法は様々であり生物的な分解や物理的な分解等が利用されています。今回は長い間利用されてきた塩素による水の殺菌について考えてみたいと思います。

 

 一般に細菌、ウイルスなどの病原菌などを殺して無害化することを「殺菌」するといいます。水道法では「殺菌」の意味で「消毒」という言葉を用いています。いずれの用語に関しても細菌を完全に殺すことを意味している訳ではなく、水道法でも健康に関する項目の中で、一般細菌が「1mLの水に細菌数が100以下であること」と規定しており、細菌数0を要求しているわけではありません。
 

 これに対して「滅菌」とは、病院で手術などに使う器具を高温の水蒸気などでまったく細菌のいない細菌0の状態にすることをいいます。


 水の殺菌方法で有名なのが塩素を用いた殺菌だと思います。塩素分子(Cl2)を水に加えて反応させると、次亜塩素酸(HOCl)と次亜塩素酸イオン(OCl-)という殺菌作用を持つ物質が生成します。この次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンを有効遊離塩素と呼んでいますが、各々の存在割合はpH(水素イオン濃度)の値に依存します。殺菌効果においては次亜塩素酸の方が遥かに大きいので、殺菌効果は酸性側(pH値が小さい方)で大きくなります。このように殺菌能力は水のpH値に依存するという特徴があります。


 そこで、塩素の特徴について説明します。塩素は殺菌効果が高く、しかもその効果が残留するというメリットがあるため、殺菌剤として最も多く使用されています。この「効果が長続きする」という性質が水にとってはきわめて重要になります。持続性がなければ、浄水場で殺菌したキレイな殺菌水も、配水管を通る間に殺菌力を失ってしまいうからです。その結果、家庭の水道の蛇口から出る水は、病原菌の繁殖した危険極まりないものになってしまうからです。


 ただ、塩素殺菌で問題として取り上げられるのがトリハロメタンという物質です。トリハロメタンの問題は、濃度自体は希薄とはいえ、長期にわたる摂取による悪影響が心配されているからです。そこで、最小限の塩素で最大限の殺菌効果を得るということが重要なポイントとなってきます。


 一般的に、河川や湖沼は嫌気性あるいは好気性細菌の働きによる自浄作用を持っていて、水中に混入した汚染物質は無害なレベルにまで微生物によって分解・除去されます。

 しかし汚染物質が有機物である場合、それが分解する際にフミン質やフルボ質といわれる安定的で水中の微生物によって分解されにくい成分が発生してしまいます。これらの物質が塩素と反応すると微量汚染物質が発生すると言われています。これがクロロホルムを中心とするトリハロメタンと呼ばれる物質です。

 

 塩素による殺菌は残留効果と低コストというすぐれた特徴を持っていますが、トリハロメタンの発見により、致命的な欠点があることが明らかになりました。こうして塩素殺菌の危険性がクローズアップされ、現在では大きな問題になっています。


 トリハロメタン発見の歴史的な経過をたどってみると、1972年、ロッテルダム水道のルーク博士は、ライン川の水に「トリハロメタン」が存在していることを発見し、更に1974年に米国ミシシッピー川下流ニューオリンズ市において泌尿器および消化器系のガンによる死亡率の高いことが判明。その原因が水道水中の発ガン性物質にあるとの指摘がなされました。同時に飲料水の殺菌に使用されている「塩素」と水中の有機物質とが反応して生成する「トリハロメタン」を含む82種類もの有機物が、同市の水道水中から検出されたのです。その後の調査によってこれらの有機物の多くが、発ガン性や変異原性(遺伝子に損傷を与え、突然変異を引き起こす性質)を持つことが動物実験で明らかになりました。


 現在では、水道水といえばトリハロメタン、と連想する人が多いようですが、水道水中に含まれる汚染物質はトリハロメタンだけではなく、半導体工場などで使用されている有機塩素化合物(トリクロエチレン、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン)をはじめ、四塩化炭素、最強の発ガン性物質といわれるMX(3-クロロ-4-ジクロロメチル-5-ヒドロキシ-2(5H)-フラノン)、農薬、ポストハーベスト(収穫後に保存のために散布する農薬)、アミン類、アスベストなどです。これらの物質は、発ガン性や変異原性を有していることが明らかになっています。


 とくに、気をつけなければ行けないのは有機塩素化合物に至っては地下数百メートルもの深井戸からも検出されています。一般に、地上の水が地下水脈にまでたどり着くのに60年~100年かかるといわれています。その間に地中の粘土層や岩石層によって汚染物質が濾過され、しかも適度なミネラル分を含んだ「安全でおいしくしかも健康に良い水」に生まれ変わると言われています。

 ところがトリクロロエチレンなどの有機塩素化合物は、地表面にこぼれるとごく短期間で地下水脈に到達してしまいます。しかも、地下水脈は地中であらゆる場所とつながっており、あっという間に汚染が広がってしまうのです。こう考えると現在では地下水脈を利用した井戸水も安全と言いきれる状態ではなくなってきているようです。