昨日サルモネラ菌について書きましたが、もう少し詳しくサルモネラ菌について書いてみたいと思います。とくに身近にいる動物との関係はあまり取り上げられていないと思うので詳しく書いておきます。
サルモネラ菌とは、グラム陰性の腸内細菌科の一属(サルモネラ属)に属する細菌のことです。そして、サルモネラ菌の大きな特徴は動物にも人間にも感染するということです。
主な生息場所は動物の小腸で、腸の細胞から腸間膜リンパ節へと移動し、そこで増殖してエンテロトキシンという毒素をまき散らします。細かいものまで含めると2,000以上の種類がありますが、臨床上問題となっているのは、腸チフスあるいはパラチフスと呼ばれる消化器系の不調を引き起こす「チフス性サルモネラ」、および食中毒を引き起こす「食中毒性サルモネラ」です。
サルモネラ菌の症状には以下のようなものがあります。
食中毒性サルモネラ菌の主な症状
食中毒性サルモネラ菌の主な症状は、腹痛、嘔吐、下痢、粘血便などです。若齢、高齢、免疫力の低下を引き起こす各種の病気にかかっている場合は、細菌が血液中に拡散する「菌血症」を起こして重症化することもあります。また最も恐ろしいのは、細菌が産生する「エンドドキシン」と呼ばれる毒素によるショック症状です。これは「エンドトキシンショック」とも呼ばれ、最悪のケースでは死亡してしまうこともあります。
チフス性サルモネラ菌は人に対して特異的に感染し、他の動物には感染しません。症状は10~14日程度の潜伏期間の後、徐々に体温が上昇し、40℃近くにまで高まります。その後バラ疹や脾腫といった特徴的な症状が現れると同時に、下痢や便秘と言った消化器系の症状も呈するようになります。重症患者においては腸出血や腸穿孔などを起こすこともありますが、90%以上の患者では自然と熱が下がり、ゆるやかに快方へと向かっていきます。
このように、人に対してはさまざまな症状を引き起こすサルモネラ菌ですが、犬や猫においては比較的症状が出ないことが多いようです。
犬の糞便中から検出されるサルモネラ菌の割合は、3~21.5%という高い数字ですが、その中で症状を示すのは若齢犬や妊娠犬など、免疫力がやや落ちた個体がほとんどだといいます。また猫の保有率は10~18%程度と見られていますが、犬よりもさらに症状が出にくいとされます。しかし全く無症状というわけではなく、食欲不振、体重減少、嘔吐、下痢といった人間によく似た消化器症状が出ることがあるようです。
これって、ペットを飼っている方にとってはとっても大切な情報です。ペットに症状が出なくても人間には重症になる場合もあるっていうことですからね。
サルモネラ菌の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。まずは、感染しないような予防法が第一です。
サルモネラ菌の主な原因
糞便からの感染
サルモネラ菌は、菌を保有した人や動物の糞便の中に含まれているため、汚染された糞便に何らかの形で接することで感染してしまいます。人間として注意しなければいけないのはペットの糞便を片付ける際などは十分に注意する必要があると思います。また、各種の動物の糞便で汚染されている土壌などに触れた後も十分な手洗い・殺菌などが必要です。
食品からの感染
サルモネラ菌に汚染された食物を、十分に加熱しないまま食べてしまうことで感染するケースもあります。生肉、生卵などは要注意です。なるべく加熱した食品を口にすることが大切です。
爬虫類からの感染
サルモネラ菌はカメ、ヘビ、トカゲといった爬虫類が高率で保菌していることでも知られています。2005年に行われた調査によると、ペット用爬虫類のうちこの菌を保有していた割合は、家庭内飼育で32.2%、ペットショップで80.0%、輸入直後で56.0%だったそうです。こうした爬虫類を触った手を誤ってなめてしまうことで感染することもあります。最近は爬虫類をペットにしている方も多いと思うので要注意事項です。子供たちがカエルやトカゲなんかを触った時も要注意です。
免疫力の低下
サルモネラ菌を保有していても、何の症状も示さない人がいる一方、激しい症状を呈して重症化してしまう人もいます。こうした個人差を生み出している要因の一つが免疫力です。若齢、老齢、妊娠、免疫不全症、免疫抑制剤の投与、ストレスなど、免疫力を低下させる引き金があると、通常であれば抑え込める細菌の増殖を許して発症してしまうことがあるようです。まあ、これはどんな細菌に対しても言えることです。
いずれにしても、まず予防できることを積極的に取り入れていくのが一番の方策だと思います。対処療法の研究はされていますが、まずは発症しないことが一番です。感染源は食事からだけなどと思わず、正しい情報を身に着けて対処することが大切だと思います。